漏電ブレーカーが上がらない【AN3P30TL-30G から AB3P30TLA-30GW へ交換】事例解説!

漏電

ご自宅のブレーカが落ちて停電となったときは、電気の使い過ぎを実感することも多いでしょう。分電盤でブレーカを確認し、アンペアブレーカや安全ブレーカが落ちていれば、まさしく電気の使い過ぎが原因です。停電したことで家電製品がリセットされるので、そのまま落ちたブレーカを上げるだけで復旧するでしょう。ただ、このとき漏電ブレーカが落ちていたら、注意が必要です。

当然、漏電を疑うことになりますが、長く使っている漏電ブレーカは誤動作することもあります。漏電ブレーカには、漏電を感知する零相変流器や電子回路が搭載されており、精密機器でもあるので、誤動作によりトリップするケースもあるのです。

今回は、実際に、誤動作する漏電ブレーカを交換した事例を交えながら、当日の作業状況を解説させていただきます。

目次

漏電ブレーカが上がらないトラブルで困っている

ブレーカー

「ブレーカが落ちてしまい、上がらないので直してほしい」というご依頼を、埼玉県鴻巣市の管理会社様からいただきました。ブレーカが上がらないという表現から、漏電ブレーカのトラブルである可能性が高いようです。

現地に到着し担当者さんのお話を伺うと「ブレーカを上げても、またすぐに落ちてしまう。ブレーカの故障だと思う」とのことでした。分電盤を確認すると、漏電ブレーカが落ちているので、ひとまずは漏電を疑い現場の調査を始めます。

最初に絶縁抵抗を測定します。メインブレーカをOFFとし、アースと電路側絶縁抵抗値を測定します。

計測器

こちらの会社の電路は、通常の単相3線式なので、写真のような絶縁抵抗計の場合、使用レンジを125Vとし、合否判定地は0.1MΩです。

電路の使用電圧 絶縁抵抗値 主な電路

ちなみに、日本の住宅で使用されることが多い、単相2線式100V、単相3線式100/200Vの電路は、測定電圧125Vで絶縁抵抗値が0.1MΩ以上であれば問題なしとなります。ただ、絶縁抵抗値は、温度や湿度、絶縁被覆の劣化などにより大きく変わることもあるので、0.1MΩ付近の値になった場合は、すでに劣化していると判断しても良さそうです。

また、上の表を見て「単相3線式でも200Vとして使うときは、絶縁抵抗値は0.2MΩ以上じゃないの?」と思うかもしれません。単相3線式の200Vは線間電圧の値であり、対地電圧は100Vです。なので、対地電圧150V以下の0.1MΩ以上に該当します。

話を元に戻しましょう。実際のアースと電路側の絶縁抵抗値は、100MΩ以上で問題なしです。念のため、それぞれの安全ブレーカをOFFとし、負荷側の絶縁抵抗も測定しましたが、すべて100MΩ以上となりました。やはり問題なさそうです。

互換性形漏電ブレーカー

絶縁抵抗の測定により、漏電している可能性が低いことがわかりました。担当者さん立会いの下、水回りのコンセントや、屋外の室外機を見て回りましたが、とくに問題は見つかりません。そこで、分電盤の漏電ブレーカの製造年月を確認します。付いていたブレーカは「河村電器 AN3P30TL-30G」で、前面の製造年月の刻印から10年以上前の製品であることがわかりました。担当者さんのおっしゃる通り、ブレーカの誤動作によるトリップだったようです。

漏電ブレーカが上がらないトラブルを【AN3P30TL-30G から AB3P30TLA-30GW 】に交換して対応!

漏電ブレーカが上がらないトラブルを【AN3P30TL-30G から AB3P30TLA-30GW 】に交換して対応!

既設の「河村電器 AN3P30TL-30G」を新品の「河村電器 AB3P30TLA-30GW」へ交換しました。交換後は、トリップすることもなくなり問題ないようです。念のため、クランプメータで安全ブレーカの負荷側を測定しますが、測定値はすべて0となり漏れ電流は検出されませんでした。これで作業は完了です。

クランプメーター

HIOKI公式ページより:https://www.hioki.co.jp/jp/products/detail/?product_key=1734

ちなみに、回路に電流が流せる状態であれば、写真のようなクランプメータでも漏電箇所を特定できます。安全ブレーカの負荷側の2本をはさむと、正常な回路なら行きと帰りの電流値が同じであり、互いに打ち消しあうので「0」と表示されます。漏電している場合は、行きと帰りの電流値が異なるので、電流値を測定できてしまう、ということです。

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漏電ブレーカも、クランプメータと同じような仕組みで漏電を感知するので、精密機器であるといえるでしょう。長く使用することで内部の電子回路が誤動作することも、めずらしくないようです。日本電機工業会でも、「使用から15年が経過している、漏電ブレーカ、安全ブレーカに関しては、更新が望まれる」としています。(詳しくはこちらです。)漏電の兆候が見られないのにブレーカが落ちる場合は、漏電ブレーカの経年劣化による誤動作が原因かもしれません。

漏電ブレーカが上がらない原因とは?

漏電ブレーカが上がらない原因とは?

過電流保護機能が動作したり、漏電を感知する以外にも、ブレーカが故障することでONにできない状態になることもあります。

漏電箇所を特定し切り離す

絶縁抵抗計やクランプメータがなくても、ブレーカを操作することで漏電箇所を特定できます。漏電している回路を切り離すことで、漏電ブレーカをONにできます。下記の手順通りに、ブレーカを操作してみましょう。

①分電盤のすべてのブレーカをOFFとする。

②アンペアブレーカ、漏電ブレーカをONとし、安全ブレーカを1つずつONにする。

③安全ブレーカをONとしたとき、漏電ブレーカがトリップしたなら、その安全ブレーカの回路に漏電箇所がある。

④念のため、すべての安全ブレーカで同様に漏電ブレーカがトリップしないか確認する。

以上で、漏電している回路を特定できます。特定された部屋やエリアにて、漏電している箇所がないか確認してみましょう。外見から判断できない場合は、その部屋で使用している家電製品の電源プラグを、コンセントからすべて外します。ブレーカを投入後再び1台ずつコンセントに戻していくことで、問題のある家電製品を特定することは可能です。

ただ、感電したり火災に発展する可能性もあり、危険だといえます。漏電している安全ブレーカをOFFとして切り離した状態で、以降の特定作業は、信頼のできる業者さんに任せるようにしましょう。

関連記事『漏電ブレーカーの故障?分電盤内のELBブレーカーが落ちる原因と対処方法も併せてご参照ください。

それでも上がらないときは故障かも?

長く使っているブレーカでは、内部にホコリが浸入することで接点が接触不良となり、導通とならないケースもあるようです。また、経年劣化によるブレーカ内部の損傷により、トリップした状態からONにできないなどの、不具合もあるようです。ブレーカが正常に動作しないと判断できる場合は、交換を検討しましょう。

漏電ブレーカのトラブルは、業者に相談しよう

住宅の分電盤のを操作するときは、電気の使い過ぎを復旧するケースが多いでしょう。アンペアブレーカや安全ブレーカはトリップしても、そのままONの状態に復旧させることができます。ただ、漏電ブレーカがトリップした場合は、一度完全にOFFの状態にする必要があります。覚えておきましょう。

また、漏電ブレーカが動作した場合は、必ず漏電箇所を特定するようにしましょう。漏電箇所を切り離すことで、ほかのエリアは通常通り電気を使用することができます。漏電箇所の特定が困難だったり、漏電の復旧がむずかしい場合は、専門の業者さんに相談するようにしましょう。

『DENKI110』では、ブレーカのトラブルにも迅速に対応しております。資格を持った作業員が担当しますので、お気軽にご相談ください。

※ページ内に記載されている金額は一例です。対応業者や対応箇所の状況によって実際の金額が異なる場合があります。


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