住宅の分電盤には3種類のブレーカが配置されています。この3種類のブレーカに共通しているのは、想定より大きな電流が流れたときの、過電流保護機能です。そして、漏電ブレーカのみに搭載される機能が、漏電電流を感知して電力を遮断する機能です。
漏電ブレーカが落ちていた場合は、もちろん漏電を疑います。「今、電気が使えないと困るから」といって、漏電ブレーカをONの状態に戻しても、再び漏電を感知してブレーカが落ちてしまうでしょう。漏電を解消する、もしくは漏電箇所を特定する必要があるのです。
また「漏電ブレーカーが落ちてしまったので上げようとしたけど上がらない!」というケースも少なくありません。
その場合は危険なので、無理に上げないようにしましょう。漏電ブレーカーが上がらないのには理由があるからです。
今回は、漏電によりブレーカが上がらないときの確認事項や、漏電の予防方法などを解説させていただきます。
そもそもブレーカとは
電気を安全に使う為、電気回路で発生した異常事故から電線を守るために取り付けられている安全装置です。配線用遮断器とも呼ばれています。これらは、分電盤という各部屋に電気を分けて、安全を確保する装置に入っています。
またブレーカーは3種類あり、それぞれ役割が異なります。
アンペアブレーカー
電力会社と契約した電気総量を管理しているブレーカーです。決められた契約アンペア数を超えた電気が使われると、アンペアブレーカーが遮断し家全体の電気が止まる仕組みになっています。
安全ブレーカー
分電盤から
各回路に分岐する電気を制御するためのブレーカーです。安全ブレーカーには各部屋の担当が振り分けられており、各部屋の
使用電気量を超過するとブレーカーが落ちる仕組みになっています。
漏電ブレーカー
電気が通ることを想定していない箇所に、電気が流れ出てしまうことを漏電といいます。漏電により漏れ出た電流が、誤って人に流れてしまえば感電になります。漏れ出た電流が、放電するときに「パチッ」と火花が出てしまえば、そこからガスに引火して火災に発展するかもしれません。そんな、漏電が要因となる災害を未然に防ぐために、漏電ブレーカが配置されています。
漏電ブレーカーが落ちているということは、断線などが原因で漏電している可能性が高く、そのままブレーカーを上げると火災などの災害に繫がる可能性があるため大変危険です。
漏電ブレーカーが落ちているときには、緊急事態が起きているときと覚えておきましょう。
各ブレーカーの仕組みについては「
分電盤やブレーカーってどういう仕組みなの?中身の構造とその役割を図で解説!」を合わせてご確認下さい。
漏電ブレーカの特徴と役割
分電盤には3種類のブレーカが配置されています。
3種類のブレーカに共通しているのは、設定された値を超える電流が流れたときに、電力を遮断する機能があることです。漏電ブレーカのみに搭載される機能は、漏電を感知して電力を遮断すること、漏電を感知する機能を確認できる仕組みがある、ということです。ここで漏電ブレーカが動作する仕組みを考えてみましょう。
図のように、自動販売機に電力が供給されていたとします。正常に電力が供給されている場合、漏電ブレーカを流れる「行き」と「帰り」の電流値は同じになるのです。
ちなみに、ここで「自動販売機で電力が消費されるので、帰りの電流値のほうが少なくなるのでは?」と思うかもしれません。
この疑問は、オームの法則で解決できるでしょう。電源と抵抗がつながれた回路に流れる電流値は、どこで測っても同じ値になるのはご存じのとおりです。電源と自販機がつながれた回路に流れる電流も、「行き」と「帰り」は同じ値になるのです。
話をもとに戻しましょう。このとき、自販機で漏電が起きるとどうなるでしょう?漏電により、漏れ出た電流はアースを通って大地に放出されます。放出されることで帰りの電流値は減ってしまいます。式で表すと
行きの電流=漏電電流+帰りの電流
となり、漏電ブレーカの中の零相変流器を流れる電流は、「行き」と「帰り」の値に差ができます。電流値に差ができると、零相変流器に磁界が発生し検出される値が設定値を超えると電力が遮断されるのです。以上のような仕組みで、漏電は感知されます。
また、漏電ブレーカにはテストボタンが本体に配置されています。これは、漏電を感知した状態をつくり出すことで、疑似漏電を感知させ動作を確認するためのものです。点検のときに使用することが多いです。
テストボタンについては、こちらの記事でも解説しています。
【対処方法】漏電ブレーカが上がらないときに確認すること
漏電ブレーカが落ちていたら、漏電した状態を解消しないとブレーカをONにできません。もしくは、漏電している回路を切り離す必要があります。漏電箇所を特定する手順を確認していきましょう。
漏電を防ぐために漏電している可能性がある回路を全て切り離す必要があります。
まずは漏電ブレーカーを下ろしたまま安全ブレーカーを全て下げましょう。
これで漏電している可能性がある箇所を全てシャットアウトできます。
なお、アンペアブレーカーはそのままオンにしておいてください。
次に漏電ブレーカーをオンにし、下げた安全ブレーカーを
1つずつ上げていきます。
部屋の名称を確認しながら漏電ブレーカーの状態をチェックし、どこの部屋で再度漏電ブレーカーが落ちるか確認してください。
漏電ブレーカーが落ちた箇所で漏電箇所があります。
一箇所確認できたあとも、安心してはいけません。
複数箇所が同時に漏電している可能性も大いにありますので、念のため全ての部屋のブレーカーを一箇所ずつ確認しましょう。
全ての部屋の確認が終わったら、漏電を確認した安全ブレーカー以外を上げて、ブレーカーを復旧してください。
漏電している安全ブレーカーはそのまま下ろしておきましょう。
【手順1】安全ブレーカを全部下げる
漏電ブレーカが落ちていたら、漏電箇所を切り離しましょう。個別に配置してある安全ブレーカをすべてOFFにします。
【手順2】落ちている漏電ブレーカを上げる
漏電ブレーカをONにします。安全ブレーカをすべてOFFとし、漏電箇所が切り離された状態なので漏電ブレーカをONにできます。このとき、アンペアブレーカもONになっている必要があります。
【手順3】下げた安全ブレーカを一つずつ上げていく
安全ブレーカを1つずつONにしていきます。部屋の名称を確認しながら、漏電ブレーカの状態もチェックします。
【手順4】漏電ブレーカが再度落ちるか確認する
安全ブレーカをONにしたとき、漏電ブレーカが再び落ちたのなら、そのブレーカ(回路)に漏電箇所があります。漏電している回路を切り離した状態で、念のため、すべての安全ブレーカを同様に確認します。
【手順5】漏電している安全ブレーカー以外を上げてブレーカーを復旧する
これで、漏電箇所が特定できました。漏電しているブレーカはOFFにしたまま、すべてのブレーカを復帰します。
必要であればこの状態で、専門の業者さんに相談してください。さらに、対象の部屋に行って漏電の原因を確認しますが、ご自身での漏電の特定が不安に感じる場合は、業者さんの到着を待つようにしましょう。
東京電力登録店である弊社では漏電に関する電気工事(調査や電気配線、ブレーカーの交換工事)など数多くの電気工事実績があります。また、ご相談やお見積りを無料で承っております。「漏電ブレーカーやブレーカー、漏電」に関してどんな些細なことからでも電話相談から承っておりますのでどうぞご気軽にご相談ください。
それでも漏電ブレーカが上がらない場合
そもそも漏電ブレーカーが固くて全く上がらない、漏電箇所がないのに漏電ブレーカーをあげても電気が普及しないという場合。
こちらは漏電ブレーカーそのものが故障していたり、お住いの地域一帯が大規模停電している可能性があり、原因が解決するまで漏電ブレーカーは上がりません。
無理してあげようとするとブレーカーを折ってしまうなど不必要な破損を招く可能性があるため無理せず回復を待ちましょう。
また、各部屋のブレーカーに問題は無かったものの、利用している電化製品や配線などに故障や劣化が起きていることで漏電していることが原因で、漏電ブレーカーが上がらない場合もあるでしょう。
お住いの地域の停電状況を確認する他、原因がわからない場合は電気業者を呼ぶしかありません。
【原因1】周りが停電している
ご自宅の分電盤や、漏電ブレーカに問題がなくても、その地域一帯が停電している場合は、当然電力は復帰しません。可能であれば、モバイル端末などで確認してみましょう。
【原因2】漏電ブレーカ自体の故障
長い期間使用されていた漏電ブレーカは、ホコリなどが内部に侵入することで、接点が導通不良となり、漏電時に正常に動作しないこともあるようです。テストボタンを押しても反応しない、ブレーカがトリップしない場合は、ブレーカ自体の故障も考えられるので、専門の業者さんに相談してください。
ちなみに、テストボタンで漏電ブレーカの動作を確認する場合は、ブレーカに電源がかかっている必要があります。漏電ブレーカに電源が来ていないと、疑似漏電の状態を再現できないので、動作確認はできません。
【原因3】電化製品や配線などの故障や劣化
家電製品やコンセント、屋内配線などが、故障や劣化により漏電している場合も、漏電ブレーカをONにできません。漏電を解消させる必要があります。もしくは、先ほどの手順で漏電箇所を特定し安全ブレーカをOFFにして切り離す必要があります。無理やり漏電ブレーカをONに固定したりするのは、火災にもつながる非常に危険な行為だといえます。
漏電ブレーカーを落ちないようにするための対策
漏電ブレーカーはこのように、漏電や感電の恐怖から私達の生活を守ってくれるブレーカーですが、普段から漏電に気を付けておくだけで漏電ブレーカーが落ちないように対策できます。
ここからは漏電しないために日々の暮らしで気を付けたいポイントについてです。
電化製品の取扱いに注意
水回りの電化製品を使う際には水がかからないように注意するなど、湿気の多い場所での電化製品の取扱いに気を付けましょう。
電化製品は水が苦手です。水がかかると漏電する可能性が高まります。
また水に濡れた手で電源プラグに触れると感電する恐れもありますので絶対に行ってはいけません。
コンセントを抜くときなども必ず手の水気をふき取った状態、手を乾燥させた状態で近辺に触れましょう。
電気コードの取扱いに注意
延長コードなどの電気コードの取扱いにも十分気を付けましょう。
コードをペットが噛んでしまった、コードを曲げてしまって傷つけてしまったなど、電気コードが何らかの理由で傷付いたり変形した場合は漏電する可能性が高まります。
普段目に入る機会が多いため扱いを雑にしてしまいがちですが、使い方を間違えると火災や感電の原因に繫がる恐れがあることを忘れないでおきましょう。
コンセント部分やブレーカーを掃除する
ホコリやゴミがコンセント部分や電化製品周り、ブレーカー周辺に溜まるとブレーカーが上がらない原因に繫がったり、漏電する危険性が高まります。
家電製品周りはホコリを寄せ付けやすいため、定期的に清掃することが大切です。
汚れを放置するとそこから火災に繫がる可能性も高いため、電化製品やコンセント周りを清潔に保つことは生活を守る上で重要といえるでしょう。
火災が発生する原因
漏電で火災が発生する原因は以下です。
- 漏電部分が火花を散らすスパークを起こす。
- 水分や油分が付着して抵抗値が下がる抵抗加熱
- 漏電による電磁誘導のため、壁の中にある※ラスモルタルで使用されるラス網が燃える(誘導加熱)
※ラスモルタル:外壁で使われる、ひび割れ防止のための施工方法。ラス網と言われる金属の網を使う。
漏電ブレーカを落とさないために
漏電ブレーカが落ちないように、普段から漏電に気を配るようにしましょう。
湿気の多い場所での電化製品の取り扱いに気を付ける
水回りの家電製品を扱うときは、とくに意識して水がかからないように注意しましょう。電源プラグなど電気が流れる部分が、水に濡れたまま使用することがないようにします。当然、塗れた手で電源プラグに触れることは危険であり、感電するケースもあります。
電気コードを曲げたり変形させない
電源コードや延長ケーブルを必要以上に曲げたするのは、絶縁被覆を傷つける原因になるかもしれません。通常の使用でも、電流が流れることでコード自体も発熱します。小さな損傷でもそこから発熱し、絶縁不良を起こしてシートしてしまうかもしれません。日ごろから「電気は使い方を間違えると感電や火災に発展してしまう」ということを、心の片隅に置いておくようにしましょう。
『DENKI110』では、漏電によるトラブルにも迅速に対応しております。お気軽にご相談くださいませ。
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