漏電は、水回りの家電製品や屋外のケーブルで発生しやすい現象です。とくに台風のあとなどは、外部に設置された照明に雨水が浸入することによる漏電が心配になることもあるでしょう。そんなときに、「漏電していないか確認したいけど、やり方がわからない」と思うことがあるかもしれません。
漏電検査をする一つの基準となるのが、
漏電遮断器の動作です。
漏電遮断器とは、漏電が発生した時、その回路の電気を遮断させる保護装置です。定格電流(使用可能な電流の上限)を超えると動作します。
とはいえ、しっかりとした知識がないまま、漏電を対処しようとすれば、感電や火災に発展する可能性があり危険です。
今回は、次の漏電に関連する次の項目について解説します。
- 漏電とはどんな現象か
- 漏電が起こる原因
- 漏電漏電が発生していないか確認する方法
- 漏電が発覚した緊急時の対処法
- 漏電を防止する方法
- 漏電調査の費用について
漏電遮断器の動作でお困りの方や、漏電検査を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
漏電とは
漏電とは、電気が流れることを想定していない箇所に、電気が流れ出てしまうことをいいます。
電気が流れる電路とは、ケーブル内の導体部分や、制御回路の基盤などです。電路を包み込むようにして守っている絶縁体が、衝撃や劣化などで損傷して導体があらわになると、電気が漏れやすくなります。
そこに電気を通す性質のある水などが侵入することで、電気が流れるルートができてしまい漏電につながるケースが多いです。
漏電と感電
九州電気保安協会の公式ページより
漏電は、感電災害につながります。上のイラストのように、漏電している洗濯機に触れると、漏れ出た電気が人体に流れて、人は感電してしまいます。このとき、対象の家電製品がアースに接地されていれば、漏電電流はアースを通って大地へ放出されます。アースのほうが人体より10倍も電気が流れやすいので、人に流れる電流は軽減されるのです。
このように、水回りの家電製品や、外に設置される機器など、漏電が発生しやすいと判断される家電製品は、アースに接地しておくことで感電を防ぐことができます。
漏電と火災
漏電は火災にもつながります。通常は電気が通らない箇所を電気が通過すると、放電により火花が出ることがあります。この火花が、ガスや可燃物に引火すると、火災が発生してしまいます。
また、通常は電気が流れない箇所も、ホコリなどが水分や油分を含むことで抵抗値が減り、電気が流れやすい状態になることもあります。漏電して、電流が流れてしまうと発熱し、ついには発火してしまうのです。
漏電ブレーカーとアース
漏電災害を防ぐために、住宅の分電盤には漏電遮断器が配置されています。漏電遮断器とは、漏れ出して減ってしまった電力を感知できる特性を持ち、漏電すると瞬時に電力を遮断してくれる装置です。一般的には漏電ブレーカーと呼ばれています。
漏電遮断器には定格電流というものがあります。定格電流とは、使用可能な電流の上限のことです。通常、漏電遮断器は定格電流の1.2~1.5倍流れると動作します。
ただ、漏電遮断器が正常に動作するには、対象の家電製品がアースに接地されている必要があります。アースに接地されていると、漏電電流はアースに流れるため、それにより電力が減ったことを感知した漏電遮断器は、電力を遮断できます。
アースに接地していない場合、人体に電流が流れることでも漏電遮断器は漏電を感知できますが、人が感電してしまいます。
以上のことから、漏電ブレーカーとアース接地は、セットで施工される必要があるのです。
漏電が起こる理由
まずは漏電が起こる理由についてみていきましょう。多くの場合が、劣化や破損によるものですが、なかには意外なことが漏電の原因につながっているケースもあります。
漏電の原因
具体的な漏電の原因について詳しく紹介していきます。
【電線の断線や接触不良】
漏電の原因としてもっとも多いのが、
配線トラブルです。電線が断線していたり、接触不良が起きていたりする場合、電気が漏れて漏電が発生します。漏電遮断器とは漏れた電流を検知して電源を遮断する仕組みの装置ですから、断線や接触不良がある場合は
漏電ブレーカーが落ちます。
【配線の過負荷】
配線の過負荷も
配線トラブルの一つです。配線が電気の使用量を超える負荷に耐えられない場合、配線に過負荷がかかります。過負荷が続くと、配線が過熱し漏電が発生する可能性があります。漏電遮断器は過負荷を検知して電源を遮断するため、配線の過負荷がある場合は
漏電ブレーカーが落ちます。
【配線のショート】
配線のショートも、漏電の原因となる
配線トラブルです。配線の断線や接触不良によって、電気が意図しない経路を通ってショートが発生することがあります。ショートが起きると漏電が発生し、漏電ブレーカーが作動して電源が遮断されます。ショートの発生時は大きな電流が流れることもあり、熱により火災に発展する恐れがあり大変危険です。漏電ブレーカーが下がったからといって、
ブレーカーを上げないようにしましょう。
【絶縁体の劣化】
一般的に、絶縁体にはゴムやプラスチックなどの電気を通しにくい、もしくは通さない素材が使われます。しかし、それらの素材は、
時間が経つと変質して劣化や破損してしまいます。また、絶縁体が耐えられないほどの大きな電気が流れた場合も、破損につながることがあります。絶縁体が劣化した結果、
電気が本来の電路から逸れて流れてしまうのです。
【浸水】
電気機器が水に濡れたり、浸水したりすることで回路がショートして、漏電が起こることもあります。電線やコードに比べると流れにくいとはいえ、
水は電気を通す性質もつものです。そのため、水に濡れたことで電気が流れ出て漏電を起こすこともあるのです。
【小動物がかじる】
ネズミなどの小動物がコードをかじることにより絶縁体が破損して、漏電することもあります。
【トラッキング現象】
コンセントと差し込みプラグの間にホコリがたまり、その
ホコリが湿気を吸収することでも漏電が起こります。とくに冷蔵庫やテレビ、洗濯機の裏側など、長年コンセントを差したまま使用している電化製品に起こりやすい現象です。
漏電の検査
それでは、漏電箇所の確認手順とその対処法を解説します。ブレーカーの操作のみでも、ある程度は漏電箇所を推測できます。クランプメータや絶縁抵抗計があれば、漏電電流値や絶縁不良の度合まで、数値として計測できるため便利です。
ブレーカーを使った調査
ご自宅の分電盤を確認してみましょう。
現在はスマートメーターが普及しているため、写真左端のアンペアブレーカーは配置されていないケースもあります。
①まず、すべてのブレーカーを落とします。
②アンペア⇒漏電ブレーカーの順にONにします。
③安全ブレーカーをひとつずつONにしていきます。
④安全ブレーカーをONにしたとき、漏電ブレーカーが落ちたなら、その安全ブレーカーの回路に漏電箇所があります。漏電しているブレーカーはOFFとし、念のため、すべての安全ブレーカーを同様に確認しておきます。
以上の操作から、漏電している回路がわかりました。正常なブレーカーは復旧しましょう。
さらに、対象の部屋に行って漏電していそうな家電製品や、コンセントを確認してみましょう。外観から判断できない場合は、対象の部屋のコンセントからすべての電源プラグをはずし、ブレーカーを投入したあと、再び電源プラグをコンセントに戻すことで、漏電箇所の特定はできます。
ただ、感電や火災に発展する危険性が高い状態ともいえます。漏電している安全ブレーカーが特定できたら、そのブレーカーはOFFとし、そのあとの作業は信頼のできる業者さんにまかせたほうが安全です。
テスターを使用する調査
HIOKI公式ページより
こちらはクランプメータです。はさんだケーブルの電流値を測定できます。また、漏電ブレーカーが漏電を感知するのと同じ仕組みで、漏電の有無を確認できます。はさみこんだケーブルに漏電箇所がない場合、測定値は0となりますが、漏れ電流があるとその数値を表示します。漏れ電流が流れているアース線にはさめば、漏電電流を測定できます。
三和電気計器公式ページより
絶縁抵抗計です。ケーブルに大きな電圧を印加することで、絶縁抵抗値が測定でき、絶縁状態を把握できます。通常は無限大に近い状態で良好となりますが、漏電箇所がある場合は、絶縁抵抗値が低く測定されます。
絶縁抵抗を確認したい場合は、黒リードをアース側に接続、赤リードを電源側に接続して測定ボタンを押します。測定中は大きな電圧がかかるので、手が触れないように注意しましょう。
漏電が発覚したら
漏電の検査の項目をもとに検査をしていただき、もし漏電が発覚したらすぐに対処しなければなりません。
ここでは、漏電が発覚したとき、緊急時の対処方法をご紹介します。
電源を切る
漏電が発生している場合、まずは漏電が発生した回路や装置の電源を即座に切りましょう。家電製品のスイッチやブレーカーをオフにし、電気の供給を停止します。
スイッチやブレーカーがオンの状態だと、感電や火災など重大な事故に繋がる恐れがあり大変危険です。
漏電が発覚したら、
はじめに電源を切るということを覚えておいてください。
電気機器の確認
電気の供給をストップしたら、改めて漏電が発生した原因となる電気機器や配線を確認します。
短絡や断線、接触不良などの異常が見つかった場合は、修理や交換が必要です。ただし、電気機器のトラブルは専門知識が必要なケースが多いため、
自己判断せず電気工事の専門家に相談するのがベストです。
安全確認
漏電が起きた状況によっては、周囲の安全を確認する必要があります。火災や感電の危険がある場合は、速やかに適切な対策を取りましょう。台風や水害で床上や床下に浸水したなど、場合によっては
建物から避難する必要が生じることもあります。
停電などのケースで電気が復旧した後、家電製品が通電して起きる通電火災には十分注意しなければなりません。
建物から外に出る時も、電源を切ることは忘れないで下さい。
専門家の対応
漏電の原因や修理については、
電気工事の専門家に相談しましょう。漏電の原因を正確に特定し、適切な修理や点検を行うことが重要です。専門家の助言を仰ぎながら、安全性を確保する対策を進めましょう。
漏電の修理や点検を依頼できる専門家には、電力会社や電気保安協会のほかに、電気工事の業者も含まれます。
【電力会社や電気保安協会に依頼】
電気の保安協会では4年に1度の定期点検が実施されています。それ以外でも、個別の調査依頼に対応してもらうことが可能です。
アンペアブレーカと電力メータは、電力会社の設備になるので、無償で点検してもらえる場合もあります。東京電力の「安全点検サービス」では、無料見積りにも対応しています。詳しくは、こちらでご確認ください。
【電気工事の業者へ依頼】
漏電の場合は、素早い対応が求められます。緊急時の対処法として、すぐに駆けつけてくれる業者さんに依頼するのがおすすめです。業者さんに依頼すれば、漏電の復旧に伴う作業が発生した場合でもスムーズに対応できるでしょう。
『DENKI110』でも、漏電の点検業務に対応しています。お困りの際はお気軽にお問い合わせください。
漏電を防止する方法
ここからは、漏電を防止する方法を紹介します。これから紹介することに気をつけると、漏電を防げるうえに、電化製品の寿命を伸ばすことにもつながります。
アース線を接続する
アース線は、電化製品から出ているコードで、大地(地面)に電気を流す役割をしています。
黄色と緑のゴムのようなもので電線が巻かれ、先が二股に分かれているものをみたことがある人も多いと思います。
大地(地面)は私たちよりも電気が流れやすいため、電気を逃してくれます。人間よりも電気の流れやすいアース線をつないでおくことで、万が一触ってしまった場合でも、感電を防ぐことができるのです。
タコ足配線をしない
たくさんのコンセントを繋ぎたい場合に便利なタコ足配線ですが、過度におこなうと火災の恐れがあるので注意が必要です。
コンセントやタップに記載されているワット数を確認し、容量を超えない範囲で使用しましょう。
コードはまっすぐ差す
コンセントまでの距離が近くてコードが余ってしまう場合は、コードを束ねて使いたくなるかもしれません。しかし、
コードの曲がった部分には大きな負荷がかかり続ける状態になり、劣化を早めてしまいます。できるだけコードはまっすぐの状態で使いましょう。
水濡れ
電線やコードを水に濡らさないように気をつけましょう。「濡れた手で触らない」「カバー付きのコンセントを使う」などの対処をしておくと安心です。
また、わざとではなくても、
雨漏りによる漏電が起こることもあります。その場合は、電気工事士に調査を依頼しましょう。
掃除
ホコリや汚れは漏電の原因になります。大型家電の裏側など、掃除しづらい部分もありますが、できるだけこまめに掃除しておきましょう。
漏電調査での費用はいくら?
漏電調査・修理を依頼したときの
費用相場は7,000円~3万円程度です。内容によって金額に幅がありますが、調査の複雑である、部品・機器の交換などが必要であるなどのケースでは費用が高くなる傾向にあります。
また、漏電やショートが原因で火事になった場合、火災保険の”電気的・機械的事故担保特約”を契約していれば補償を受けられます。対象内容は状況によって異なります。詳しくは契約している火災保険をご確認ください。
緊急時は専門業者に調査を依頼しよう
平常時に一度、ご自身で漏電の点検を実施しておくと、いざというときに素早く対応できるでしょう。
ご家庭ではもちろん、オフィスなどでも災害時の漏電に備えた避難訓練を実施するのがおすすめです。各所のアースの接地状況や、分電盤のブレーカ状況、漏電ブレーカのテストボタンの位置なども確認しておくと良いでしょう。
漏電が発覚した場合は、危険のない可能な範囲でチェックしてみましょう。ご自身での確認作業に不安を感じるのなら、専門業者に相談するようにしましょう。依頼したほうが、復旧作業がすみやかに進行するケースが多いです。
漏電を検知するためには、漏電遮断器が正常に動作する状態でなければなりません。
漏電ブレーカーにあるテストボタンを使い、漏電遮断器が故障していないかを定期的に確認してください。
『DENKI110』では、漏電の点検作業にも迅速に対応しております。資格を持った作業員が担当しますので、お気軽にご相談ください。 ※ページ内に記載されている金額は一例です。対応業者や対応箇所の状況によって実際の金額が異なる場合があります。
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