アンペアブレーカーとは?概要や落ちる原因と復旧方法を教えます
分電盤の中には3種類のブレーカーがありますが、その中で「メインブレーカー」と呼ばれるのがアンペアブレーカーです。
こちらの記事をご覧になっている方は、「契約アンペア数を変更したい」「アンペアブレーカーが落ちて困っている」「アンペアブレーカーの撤去申請の方法が分からない」など、さまざまな疑問を抱かれていることでしょう。
スマートメーターが普及するようになって、従来のアンペアブレーカーとの仕様の違いに困惑される方もいると思います。実際、契約アンペアの容量オーバーをした時の復旧方法などにも大きな違いがあります。
この記事では、3種類のブレーカーの基本知識からはじまり、アンペアブレーカーについて、契約アンペア数との関係や落ちる原因・復旧方法、交換や撤去の流れを徹底解説します。
ブレーカー3種類の基本知識
分電盤にはアンペアブレーカー、漏電ブレーカー、安全ブレーカーと3種類のブレーカーがあります。アンペアブレーカーについて詳しく解説する前に、まずは3種類のブレーカーの基本知識を覚えておきましょう。
アンペアブレーカー
家庭で電気の契約を電力会社と行う時に、使用できる電力の上限を定めます。この電気の量を契約アンペア数と呼び、容量を超える電気が流れた時に自動的に電気の供給を停止させるのがアンペアブレーカーの役割です。
漏電ブレーカー
漏電ブレーカーは別名「漏電遮断器」とも呼ばれ、電気配線や電化製品が漏電している際に、漏電を感知する装置です。漏電時にそのまま電気を使用し続けることは、人体への感電や火災につながり大変危険です。こういった危険を防止するため、漏電ブレーカーが漏電時に電気を遮断してくれます。
安全ブレーカー
分電盤から各部屋のコンセントに電気を供給する回路ごとに設置されるのが安全ブレーカーです。1つの回路に流せる電気の量は決まっており、容量オーバーした際に電気の供給を止めるのが安全ブレーカーの役割です。
アンペアブレーカーの色と契約アンペア数
ご家庭の契約アンペア数を確認したい時は、分電盤の中のアンペアブレーカーを見れば一目瞭然です。アンペアブレーカーの色は契約アンペア数によって違うため色で判断できますし、多くは契約アンペア数の数字(~A)も記載されています。
契約アンペア数に対応したアンペアブレーカーの色は電力会社ごとで異なるため、どの色がどのアンペア数なのかは電力会社のホームページなどで確認してください。当然、契約アンペア数が違えば電気料金プランが異なります。
ここでは、東京電力を例にアンペアブレーカーの色と契約アンペア数、電気料金の比較をします。
ブレーカーの色 | 契約アンペア数 | 基本料金 |
---|---|---|
赤 | 10A | 295.24円 |
桃 | 15A | 442.86円 |
黄 | 20A | 590.48円 |
緑 | 30A | 885.72円 |
グレー | 40A | 1180.9円 |
茶 | 50A | 1476.20円 |
紫 | 60A | 1771.44円 |
※30アンペアの場合は、一度に3000Wまで電気を使うことができます。
電気料金などはその都度変動する可能性があるため、契約アンペア数に応じた基本料金は電力会社のホームページで確認するようにしてください。
アンペア制と最低料金制の違い
東京電力や中部電力、九州電力などは上記のようなアンペア制ですが、関西電力や四国電力、沖縄電力は「従量電灯プラン」などの最低料金制ですので注意が必要です。
契約アンペア数を基準に基本料金を決めるアンペア制に対して、最低料金制は契約アンペア数に関わらず予め最低料金が設定されている料金プランです。
契約している電力会社がどちらのプランを採用しているかも確認しておきましょう。
アンペアブレーカーがない場合もある
ご家庭によっては、アンペアブレーカーがない場合もあります。ケースとしては、「最低料金制」をとっている電力会社と契約している場合と「スマートメーター」を導入している場合との2通りが考えられます。では、アンペアブレーカーがない場合は、電気料金や契約アンペア数はどのような方法で確認すればよいのでしょうか。
最低料金制の電力会社の場合
最低料金制の電力会社と契約している場合は、契約アンペア数というものがないため、ブレーカーは色分けされていません。最低料金が基本料金に相当するため、1契約ごとに必ず最低料金はかかります。最低料金で定められた電力(15kWh)を超えるたび、1kWhごとに電気料金の単価が加算されるのです。
関西電力の場合、電気料金の単価は段階的に高くなっていきます。
kWhとは、1kWの電気を1時間使用した場合の電力を表す単位です。例えば、一般家庭での契約が多い「従量電灯A」プランでは、最低料金は1契約ごとに433.41円。1kWhごとの料金単価は、120kWhまで20.31円、300kWhまで25.71円、300kWh以上は28.70円というようになります。
(※2023年11月3日時点の料金です。)
最低料金制で電気料金を確認する方法は以下の通りです。
- 毎月の検針後にポスト投函される検針票を見る
- 電気ご使用量のお知らせで確認する
- 銀行通帳の引き落とし明細を見る
- インターネットやWEBアプリで確認する
- 電力会社への問い合わせ
もっとも確認しやすい方法を選択してください。
スマートメーターの場合
スマートメーターとは、従来のアンペアブレーカーのリミッター機能に加えて通信機能が搭載された電力量計のことで、30分ごとの電気使用量を可視化することが可能です。主に玄関付近の壁や集合住宅の共有部分など屋外に設置されます。スマートメーターには色分けや契約アンペア数の記載がないため、導入された方の中には確認方法に困っている人もいるでしょう。
スマートメーターの場合の契約アンペア数の確認方法は2つ。電力会社から毎月送られる検針票(お知らせ)もしくは電気料金の請求書を見る方法と、電力会社のWEBサイトに会員登録して確認する方法があります。
アンペアブレーカーが落ちる3パターンの原因
アンペアブレーカーが落ちると家全体が停電してしまうため、慌ててしまう方も多いです。照明やエアコンなど、生活に必要な電気機器が使えなくなってしまうととても困りますよね。実は、アンペアブレーカーが落ちる原因ははっきりしているのです。ここでは、アンペアブレーカーが落ちる原因の3パターンについて解説します。
過電流
アンペアブレーカーが落ちる(トリップする)原因でもっとも多いのが、過電流(電気の使い過ぎ)です。オーバーカレントとも呼ばれます。
前述の通り、アンペアブレーカーには契約アンペア数を超えた電気を流さないためのリミッター機能が付いているため、容量オーバーすると電気の供給がストップします。つまり、アンペアブレーカーが落ちるというわけです。
例えば、契約アンペア数が10Aにも関わらず11Aの電気が流れた場合、リミッター機能が作動してアンペアブレーカーがトリップします。大きな電力を消費する電化製品を同時に使用することで過電流が起きやすいため、家電製品の消費電力を計算してから契約アンペア数を決めるのがおすすめです。
例えば、冷蔵庫(3A)とドライヤー(12A)を同時に使用したいのであれば、最低でも15Aは必要となるので、契約アンペア数は15A以上にしなければなりません。他の家電製品を使うことを想定すると、20A以上は必要と考えられます。
短絡による過負荷
ブレーカーには電気を誘導するモーターが備わっていますが、短絡(Short Circuit)などを起こすと大きな電流(過負荷電流)が流れることがあります。
短絡とは、配線や電化製品の絶縁不良により、電位差のある配線から配線に大きな電流が流れることをいいます。短絡などによりモーターに過負荷電流が流れると、過負荷(Overload)になって配線が発熱したりモーターが焼けたりする恐れがあるのです。
そういった危険を回避するために、アンペアブレーカーが過負荷電流を遮断する、つまりトリップする場合があります。
ブレーカー本体の故障
過電流や短絡による過負荷に該当しない場合、アンペアブレーカーが落ちる原因はブレーカー本体の故障にある可能性があります。一般的なブレーカーの寿命は10年程度といわれているため、経年劣化が進むことでアンペアブレーカーの故障に至ることがあるのです。
10年という寿命はあくまでも目安ですので、設置の環境や使用頻度によって上下することもあります。ですが、長く使っていると故障リスクはそれだけ高くなるため、10年以上使用しているブレーカーは故障の可能性も疑ってください。
アンペアブレーカーの復旧方法
もし、ご家庭のアンペアブレーカーがトリップしてしまったら、どのように対処すればよいのでしょうか。基本的には、アンペアブレーカーはご自分で復旧していただくことが可能です。分電盤にある従来のアンペアブレーカーと屋外のスマートメーターでは復旧方法が異なりますので、順にご説明します。
分電盤のアンペアブレーカーの場合
分電盤にあるアンペアブレーカーが落ちた時は、手動で復旧作業を行う必要があります。
明らかに過電流が原因だと分かる場合は、ブレーカーがトリップした後にコンセントを抜くなどして使用する家電製品の数を減らしてください。同時に使用する家電製品の合計アンペア数が、電力会社との契約アンペア数を超えないようにするのがポイントです。あとは、落ちたアンペアブレーカーのスイッチを入れるだけ。問題が解決すれば、元のように電気を使用できます。
ただし、頻繁にアンペアブレーカーがトリップする場合は、必要なアンペア数に対して契約アンペア数が少なすぎると考えられます。その際は、契約アンペア数の変更も検討しましょう。
スマートメーターの場合
スマートメーターの場合、ブレーカーがトリップした時に手動でスイッチをオンにする必要はありません。アンペアブレーカー機能が作動し停電しても、10秒経つと自動的に電気が点灯します。自動的に復旧するとはいえ、契約アンペア数を超えた電気の使用が続くと、再度ブレーカーがトリップしてしまうため、使用する電気を早期に減らさなければなりません。
万が一、短時間に何度もトリップと復旧を繰り返すと、自動で電気が点かなくなることがあります。この場合は、契約している電力会社に連絡をし、復旧の依頼をしてください。
アンペアブレーカーの交換を検討するのはどんな時?
アンペアブレーカーの交換を検討するケースは「契約アンペア数を変更したい時」と「ブレーカーの寿命や不具合が起きた時」の2つに分けられます。どんな時にアンペアブレーカーの交換が必要なのか知っておけば、いざという時の判断に困ることがありませんよ。ここでは、具体的な事例をご紹介します。
契約アンペア数を変更したい時
まずは、契約アンペア数を変更したい時にアンペアブレーカーの交換を行う事例です。
電力の需要が増加した
ご家庭で新たに電気製品を購入する場合や、オフィスでアプライアンス製品を導入する場合は、それまで以上に多くの電力が必要になります。現在の契約アンペア数に余裕があれば変更を検討しなくてもよいです。
しかし、新たな機器を導入することが過電流の原因になりそうな時は、契約アンペア数を大きいものに変更することを検討します。契約アンペア数を増やすことで、安定した電力の供給が確保されるでしょう。
アンペア数が不足している
過去にアンペア数の不足が原因でアンペアブレーカーが落ちたり停電したりした経験がある場合、契約アンペア数を増加する必要があります。無理に使用を継続すると、何度もブレーカーがトリップして不便を感じるだけでなく、故障にもつながりかねません。電力供給を安定させるためにも、契約アンペア数を見直しましょう。
新たな電力要件に対応する
太陽光発電のためのソーラーパネル、電気自動車の充電ステーション、ビルや工場における大容量の空調設備の導入など、環境に配慮した新たな電力要件に対応する事例は近年増加しています。これらの設備を導入すると、少ない契約アンペア数では対応できない可能性があります。
例えば、太陽光発電を導入した場合、現在の使用電力に加えて、発電システムによる電力も加算されるため、アンペアブレーカーが大きな電力に対応できる必要があるのです。太陽光発電での発電量は1kWにつき10~11Aですので、5kWを搭載している場合は60Aの契約アンペア数が必要になります。
ブレーカーの寿命や不具合が起きた時
つづいて、ブレーカーの寿命や不具合が起きた時にアンペアブレーカーの交換を行う事例です。
年数と経年劣化
アンペアブレーカーを含め、ブレーカーは設置から年数が経つと経年劣化が進み、動作に支障をきたす可能性があります。なお、スマートメーターに関しても耐用年数は10年程度とされています。アンペアブレーカーの動作が不安定だと、過電流や過負荷を防ぐことができないケースも考えられます。特に、10年以上経過した古いブレーカーは交換を検討すべきです。
動作不良
アンペアブレーカーが頻繁にトリップし、正常に動作しない場合あるいは電流の遮断が不正確である場合は、故障の兆候とみられます。ブレーカーの安全性が欠如している可能性があるため、安全のためにも速やかに交換が必要です。
アンペアブレーカーの撤去申請や流れについて
アンペアブレーカーを交換する場合や、スマートメーターがあるためアンペアブレーカーが必要ない場合は、既存のアンペアブレーカーを撤去することになります。ここでは、分電盤にあるアンペアブレーカーを撤去する流れを解説します。
①電力会社への連絡
アンペアブレーカーの撤去を検討している時は、はじめに地元の電力会社に連絡をしてください。アンペアブレーカーは電力会社の所有物ですので、無断で撤去してはいけません。撤去手続きに関する指針や要件を提示してもらえます。引っ越しや建物の解体時には、電力供給を中止するかどうかの相談も可能です。
②撤去申請の提出
電力会社に撤去手続きの同意が得られた場合、通常は撤去申請を提出する必要があります。撤去申請の際は、アンペアブレーカーを撤去する理由・所在地・契約者・電力メーター番号・撤去可能日などの情報を提供します。この情報に基づいて電力会社は審査を行い、撤去の許可を出すか判断します。電柱からの引込線の撤去を含む場合は、撤去可能日の1週間前までに撤去申請を出しましょう。
③撤去作業
電力会社の撤去許可が下りたら、電気工事の専門家に撤去作業を依頼します。専門業者なら、アンペアブレーカーを安全に撤去し、必要に応じて配線の修理を行ったり電気工事を実施してくれます。
④証明書の取得
アンペアブレーカーの撤去作業が完了したら、業者に電気工事の施工証明書を発行してもらいます。施工証明書は電力会社に提出されるもので、アンペアブレーカーの撤去が正式に行われたことの証明になります。
⑤撤去後の電気供給
アンペアブレーカーの撤去が済み、契約アンペア数に変更がある場合、新しい電力設備に合わせた設定がなされます。電力供給が再開すれば、通常通りに電気が使用できるようになります。
賃貸物件では、退去時に入居前の状態に戻す原状回復が基本となるため、念のため管理会社や大家さんに承諾を得てから撤去申請するようにしてください。
アンペアブレーカーの交換や撤去に関するご相談はDENKI110まで!
この記事では、アンペアブレーカーの基本知識から落ちる原因、復旧方法、撤去申請まで一挙に解説しました。アンペアブレーカーは正しく電気を使うために必要な装置、と覚えておきましょう。
電気の使い過ぎが原因のトリップは簡単に解決できますが、老朽化や故障が原因の不具合はご自分で解決するのは難しいです。また、建物の解体工事やスマートメーター導入などでアンペアブレーカーを撤去したい時、電力会社への撤去申請が必要です。ご検討中の方は、今一度撤去の流れをご参照ください。
アンペアブレーカーの交換や撤去に関するご相談はDENKI110にお任せください。
参考サイト:DENKI110(電気工事)https://denki110.net/
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